収蔵品の紹介


谿山行旅圖

谿山行旅圖

 画面中央には重量感がある山が聳えるこの作品。まさに北宋山水画の特徴を顕著に現している名作と言えるでしょう。山は天を突き、頂上には生い茂る潅木。険しい山腹には滝が流れ落ち、切り立った壁に沿って雲が湧き上がっています。実に雄健な風景が、見るものの目の前に迫ってきます。

 壮大な自然の中を、数十匹の馬を連れた商人の一団が先を急いでいる様は、まるで一遍の詩そのもの。この一団のごく近くに、作者の落款「范寬」がありますが、見つけ出すのはちょっと大変。がんばって探してみてください。

 范寬の山水画において、この作品では特に山が大きく、人物が小さく描かれています。この山を壮大に描くスタイルは、北宋時代の画風の特徴。中国の美術史において、范寬は「善と山の神」と呼ばれており、董源、李成と並んで、北宋山水画の三大大家の一員となっています。

※同じ山水画でも、北宋と南宋ではかなり画風が異なります。北宋画はリアルさを重視し、風景を中心においています。一方、南宋は抽象的な画風で余白が多く、レイアウトを重要視しているのが特徴です。


清明上河圖

清明上河圖

 清明上河図は北宋の都のにぎやかな情景をリアルに描写している楽しい作品です。宋の時代に商業活動が発展していくにつれ、庶民文化と生活が題材として描かれることが多くなりました。その中でも、張擇端の作品は、ずばぬけて秀逸と言われています。

 この絵は幅が1152.8cmとかなり大型。商売の様子や、路上の芸人のパフォーマンス、お嫁入りの行列など、一般市民の生活の様子が生き生きと描写され、作品の前で足を止めること必須の傑作です。

※原本は北宋の時代のものですが、故宮収蔵品は、清の時代に描かれたものです。

 清明上河図は中国の絵画史上において、全景式の社会風俗を描くスタイルを確立させた作品です。後世への影響は極めて大きく、模写もかなりの数が作成されています。有名なものとしては明代の仇英の作品があげられます。
また、清の乾隆年間も多くの模写が生み出されました。清明上河図にインスパイされ、庶民の生活を描いた作品も少なくありません。だからこそ、清明上河図は永遠に中国文化の長河に生きながらえているのです。


早春圖

早春圖

 この「早春図」は、メインとなる景色が中央に集中しているのが特徴。范寛の谿山行旅圖の落ち着いた雰囲気と比べると、山中を行く旅団が生き生きと描かれているのがわかります。これは「早春図」は寒い冬が過ぎ去った、雪解けの頃、渓谷の氷や、凍りついた樹木が息を吹き返し、万物が眠りから目覚め、活気を取り戻す瞬間を描いているからです。

 卓越した筆使いで早春のしっとりとした雰囲気、硬い岩肌、躍動する断崖を描く様子は、見事の一言。特に松のような巨木や雲の表現が巧みであり、山石は「巻雲皴」、樹木は「蟹爪」という独特のスタイルで描かれている。

 郭熙は北宋の中期を代表する山水画家。宮廷に画師として仕事を得た後、早くから宮殿や寺社の壁画や大型の屏風を手がけ、その作品の素晴らしさから皇帝も認める画家となりました。
 「早春図」が描かれたのは神宗熙寧五年(1072年)で、現存する中でも最も古く評価の高い作品です。特に人物の描写が際立っており、赤ん坊を抱いた女性、荷物を運ぶ二人の子供、その前を走る犬、みな、家に帰る途中のよう。当時の庶民生活の様子が、実に生き生きと描写されています。
 作品の右側には、漁をする人、山道と橋上には、旅路を急ぐ人たちがいて、この作品を見飽きると言うことがありません。この人々の背後に聳えるのが、巨大な山で、人間の小ささが、山の壮大さを引き立てる構図となっています。


溪山清遠圖

溪山清遠圖

 宋王朝が南に移転したことに伴い、当時の画家たちの間に江南江水の長流と雲の流れを表現そうとする試みがはじまりました。ここで、多くの画家が、巻物に書くスタイルを選び始めたのです。北宋に流行していた主題を画面中央に置き、写実的な描写を好むスタイルが、南宋では主題を中央からあえて外したり、一辺に描くスタイルに変わりました。

 夏珪は画面の半分に描くスタイルを好んだため、「夏半辺」の呼称を与えられました。この「溪山清遠圖」は長く、描かれている景色も豊富な変化を見せています。山峰が突起し、川が曲がり、作者はさまざまな角度から景色を切り取ることによって、山と川が異なる視点から描かれた独特な空間生み出すことに成功しました。

 この「溪山清遠図」は中国巻物として非常に有名な傑作です。作者は最淡遠の詩に表された心境を、一つの渓流を描写することにより画面に再現しました。これは最も難しい挑戦でしたが、第二段のラストに余白を残し、また、勾勒法という技術を使って石壁の輪郭を描くことにより、それに成功しています。
 また、大量の水と墨を紙の上で非常に速いスピードで操ることにより、水と墨がうまく混ざり合い素晴らしい結果を生み出しています。


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