2004年 鐵路節

蒸気機関車 鉄道弁当


 台湾の鉄道は日本統治時代に本格的な発展を見せ、現在でも戦前に建造された駅舎や、車両などが数多く保存されているため、日本の鉄道の歴史を知る上でも重要な資料として注目されています。新竹駅や台南駅などは改修を重ねながらも、まだ現役の駅舎として利用されているのですよ。

 その中でも今年の鐵路節で特別公開された「お召し列車(台湾では花車と呼びます)」こと、皇族、VIP専用車両は白眉もの。いずれも日本人と台湾人のタッグの下、SA4102号は台湾総督の専用列車として1904年に、もう一両のSA4101号は1912年、当時は皇太子であった昭和天皇の台湾遊行のために、ここ台湾で製造されました。

 青いペンキが塗られた外見は、普通の車両と特に変わりは無いのですが、ドアを開けた瞬間、目の前に広がるのは高級ホテルのラウンジもかくや・・といった豪奢なインテリア。

 壁や柱には阿里山の最高級ヒノキが使われ、VIPにふさわしい重厚な雰囲気ですが、皇室を象徴する菊や、台湾らしい蘭や蝶のエキゾチックな彫刻、花をモチーフとしたステンドグラスが随所に飾られており、華やかなムードを演出しています。



川端玉章の蒔絵
 また天井やランプなどは、当時流行のアール-ヌーボー様式の影響でしょうか、優美な曲線を描き、車内の狭さを感じさせないデザインに。まさに走る芸術品の名に相応しい美しさです。洗面所の鏡が蝶の形になっていたり、丸窓にはめられた三角形のガラスは台湾の台の字の“ム”を意味していたりと、遊び心も。

 特に注目したいのは、SA4101号のメインリビングに飾られた蒔絵の人物画。明治の著名な画家、川端玉章(1842〜1913)の晩年の作品であり、これだけでも値がつけられない価値があるのだそうですよ。


魚雷型通風管
 車内には、移動中に快適に過ごせるよう、さまざまな工夫が隠されており、例えば菊の花が彫刻された欄間は通風孔を兼ね、車両の天井に設置されたミサイルのような「魚雷型通風管」を通じて、新鮮な空気を車内に取り込むシステムになっています。

 また、トイレの壁に設置されたフタを開けると、蛇口と洗面台が収納されていたりと、ベッドマットの下には、細い網目状のスプリングを敷いて走行時の揺れを抑えたりと、随所に先人の工夫と知恵を見ることができます。SA4102号は台湾ではじめて発電装置を備えた客車であり、その豪華さからも「線路上の宮殿」と呼ばれたそう。

 皇族、VIP専用車両といえども、SA4101号は全長約16m、SA4102号は約14m、幅は3m弱と、そう広くはない面積にベッドルーム、リビングルーム、ダイニングルーム、従者の控え室、洗面所がぎっちりと詰められているのですから、機能性と美しさを両立させるために、さぞかし製造担当者は頭をひねったことでしょう。

 戦前に建造されたお召し列車で現存するものは日本国内を含めても10にも満たず、そのうちの2両がこのSA4101号とSA4102号なのだとか。何度も日本から譲って欲しいと打診されたそうですが、「これは台湾の宝物ですから手放すことはできませんよ。」と、案内をしてくださった台湾鉄道の職員の方は、胸をはっていらっしゃいました。

 これらのお召し列車は戦後も蒋介石総統、李登輝総統などに利用され、現在は台湾鉄道の施設で静かな余生を送っています。一般に公開されるのは今回の鐵路節がはじめてで、内部見学はマスコミ関係者のみに特別許可と、今でもVIP専用車に相応しい丁重な扱いを受けているのでした。

●車両データ
型番 SA4101 SA4102
製造年 1912年 1904年
製造メーカー 台北機廠 台北機廠
重量 25t 20t
車体全長 16400mm 13988mm
車体幅 2706mm 2616mm
車体高 3613mm 3467mm
現存数


前のページへ次のページへ