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「大観」は、2007年3月25日で大好評のうちに終了しました。




作者名 范寬(10世紀末から11世紀前半にかけて活躍)
時代
展示場所 2F書画展示室
展示期間
形式 掛軸
サイズ 155.3 × 74.4 cm
谿山行旅圖

北宋中期の仁宗皇帝の時代に活躍した陜西華原出身の平民画家、范寬についての記録はあまり残っていないのですが、温厚な性格で酒好きな彼の作品は、徹底した自然観察の上に成り立つものでした。彼の優れた山水画は、後の北宋後期の宮廷画家達にも多大な影響を与え、北宋山水画の三大流派を創設した人物としても知られています。

作品画面の三分の二のスペースを占める大きな山。圧倒されるほどの重量感をその構図で表したこの作品は、まさに北宋山水画の特徴が富に現れた傑作です。遠景の聳え立つ山が湧き上がる雲で遮断されていて、それがより一層この山の雄大さ、険しさを強調しています。岩肌のゴツゴツした様子は「雨點皴」と呼ばれる点描のような范寬独特の画法により描かれていて、岩のどっしりとした重みを感じさせてくれます。

画面の右下には、横切る道に4頭のロバを引き連れた商人の一団が描かれています。その描写は実に緻密で、先頭を歩くヒゲ面の男はムチを片手に先を急ぎ、その後に続くロバはそれぞれ重い荷物を背負い頭をたれ、ゆっくりと歩を進めています。その生き生きとした細かな描写は范寬の高い観察能力を証明するものです。それらの描写をじっくりと見るついでに、「范寬」という二文字の落款を見つけてみてください。1958年に初めて発見されたこの落款は、言われてもじっくり見ないと分からないほど。商人の一団の後方にうっすらと、樹の葉に隠れるように記されています。

普通山を描く場合、遠方にある山頂部分は小さく描かれたり薄く書いたりされるのですが、画面の大きなスペースを占める谿山行旅圖の山は、それがまさに逆になったかのよう。とはいえ、近景の商人の一団や中央部分の幾重にも重なる小さな滝の部分をみると、やはりこの大きな山は遠くにあるのだと気づかせてくれますが、この絶妙の遠近感がさらに山の迫り来る雄大さを強調しているのです。この山の描き方からみても、范寬は自然に特別な畏敬の念を抱いていたのだということが分かります。実際彼の作品は、ほとんどが春夏秋冬四季の移ろいを描いた山水画で、「善興山傳神(山と意思疎通が出来るかのごとく山に通じている)」とも呼ばれています。





作者名 郭熙(11世紀頃活躍)
時代 宋(1072年)
展示場所 2F書画展示室 
展示期間
形式 掛軸
サイズ 158.3 × 108.1 cm
早春圖

郭熙は北宋中期の神宗皇帝の時代に活躍した宮廷画家。とはいえ、画家として活躍したのは晩年になってからで、それまでは道教を学んでいたと言われています。宮廷画家となってからは、宮殿や寺廟の屏風や壁画などをいくつも手がけ、優れた画家として神宗皇帝からも認められ数多くの大型山水画を製作しました。李成と范寛の画様式を統合し、後の中国絵画に多大な影響を及ぼしました。山水画の作品だけでなく、山水画論「林泉高致」も重要な文献として遺されています。

この「早春圖」は1072年の郭熙がおよそ70歳の頃に描かれたもので、中国絵画史上最も重要な作品とされています。遠景の岩山、切り立った断崖、中央の靄のかかった硬い岩肌、近景の松の巨木に力強い岩石と、メインとなる景色が中央に集中していて、北宋山水画の特徴がよく現れています。

雪解けの頃の、大地が目覚め、凍りついた樹木が息を吹き返し、万物が活気を取り戻す早春の息吹きが描いてあり、溢れんばかりの生命力に満ち溢れています。作品にどこか幻想的な雰囲気が漂うのは、空間表現が優れているからだけでなく、濃淡の違う墨を何層にも重ねて、モチーフを曖昧に描く「雲頭皴」や「鬼面皴」などの独特の画法が駆使されているからです。遠景の靄の中に浮かぶS字型に湾曲した岩山は、墨の濃淡の劇的な変化により、さらに不思議な空間感覚をかもし出し、万物の静かな息遣いまでもが感じられるものとなっています。

また、松の木や人物などの細部の描画にも優れた写実性が見受けられます。人物は全てとても小さく描かれていますが、それがいっそうこの山の壮大さを引き立てています。左下に描かれた赤ちゃんを抱いた女性と、前後の荷物を運ぶ二人の子供、そしてその前を走る子犬。漁から帰ってきたところをお迎えにきたのか、皆で家路につく途中でしょうか。山道には旅路を急ぐ人、橋の上には荷物を運ぶ人、作品の右下には漁をする人、と当時の平和な庶民生活が見事に描写され、見飽きることなく、見る者の想像力をかき立てる大作です。





作者名 李唐(12世紀頃活躍)
時代 宋(1124年)
展示場所 2F書画展示室
展示期間
形式 掛軸
サイズ 188.7 × 139.8 cm
萬壑松風圖

李唐は、北宋から南宋へと移り変わる時期に活躍した河陽三城出身の画家です。絵を売ることにより生計を立てていましたが、徽宗時代に画院に入り宮廷画家に出世。その後、宋が南渡した際に放浪の旅に出るものの、その後、高宗の画院に復職します。山水画や人物画が得意で、劉松年、馬遠、夏圭と並び「南宋四家」の一人と称されています。

この1124年に描かれた「萬壑松風圖」は、李唐が60歳の頃の作品。中央に天を貫くように聳える、切り立った岩山の左側には「皇宋宣和甲辰春河陽李唐筆(1124年春、河陽の李唐筆)」という小さな落款が隠れるように添えられていることから、その年代が分かります。

前景の岩場、中景の岩肌と生い茂る松、後景の高く聳える岩山に登頂部分に密集した松の木。前景がより大きく描かれているため、この三段階を順に追って見て行くと、まさにふもとからこの圧倒されるほど雄大な岩山を見上げているかのような錯覚に陥ることでしょう。さらに「斧劈皴(ふへきしゅん:斧でかち割ったような鋭い筆使い)」という画法で描かれた岩山のゴツゴツとした岩肌は岩の質感までもを表現していて迫力満点。かと思えば、細く葉の一本一本までもが描かれた松の葉は、とても写実的で風に揺れる松の葉の音までが聞こえてくるかのよう。

徽宗の画院に入った後に描かれた山水画で、随所に李唐の卓越した画法が見受けられる大作です。





作者名 蘇軾(蘇東坡)(1036-1101)
時代 宋(約1082年)
展示場所 2F書画展示室
展示期間
形式 巻物
サイズ 34.2 × 199.5 cm
寒食帖

蘇軾(1036~1101)は、北宋時代の書家であるばかりでなく、政治家、詩人としても活躍していました。詩や書の世界では東坡肉(トンポーロー/豚の角煮)の由来となった「蘇東坡」の名で親しまれています。書の世界では、蔡襄、黄庭堅、米芾と並び宋の四大家の一人として知られています。政治家としては博学ですが中央と対立する派のため、幾度も左遷されるという波乱万丈の人生を送りました。彼の号「東坡」は、左遷された先の荒れた土地を自ら開拓し「東坡」と名付けたことにちなみます。

この寒食帖は、黄州へ流罪となった時期に書かれたもので、彼の感情と共に自在に変わる字のリズムや文字の大小、行間の秩序などに、彼の人生に対する悲哀と憤り、やるせなさが見事に表された作品です。文字の大きさが揃い、字間も均等に取られ、情緒の安定した第一行から見て行くと、徐々に時に大きく、時に小さく、字間や字体も爆発する感情に伴い次々とリズムを刻み変化していきます。蘇軾の書は、自由自在に字の流れやリズム、行間を操り、情緒を見事に表したものばかりですが、この寒食詩は中でも秀逸。何百年に一枚出るか出ないかの逸品として絶賛されている必見の書です。

また寒食帖の巻末には、長い余白が取られており、「500年後の人が跋(後書き)を記すことを望む」と言いのこしていたとか。それから18年後の1100年に、同じく宋の四大家の一人として有名な黄庭堅がこの巻末の余白に跋文を加えました。これにより一つの巻物上に四大家の二人の書が揃うこととなり、この寒食帖はより貴重な書として、「天下第一の書」として伝えられるようになったのです。





作者名 米芾(1051-1107)
時代 宋(1088年)
展示場所 2F書画展示室
展示期間
形式 巻物
サイズ 27.8 × 270.8 cm
蜀素帖

宋の四大家(蔡襄、蘇軾、黄庭堅、米芾)の中でも特にテクニックに優れていたと言われる米芾。41歳前までの名は黻(フツ)、字は元章の襄陽人です。書家としてだけでなく、詩人として、画家としても活躍、さらにはコレクションや鑑定なども精力的に行ったマルチな才能の持ち主ですが、ちょっと変わった性格で変人扱いされることもあったとか。

この蜀素帖は、米芾が38歳のときにしたためられたもの。「蜀素」とは、東川(現在の四川東部)で織られた非常に貴重な絹のことで、目が詰まり純白で厚手の絹布は書画の画材としても非常に珍しく貴重なものです。この蜀素帖の末尾には、この「蜀素」を所有していた林希が記した内容が残っており、それによるとこの「蜀素」は、慶暦4年(1044年)に東川で織られたもので、20年あまり林氏の家に大事にしまわれていましたが、善書の人に字を書いてもらおうと決めたことが書かれています。それから20年ほど後の1088年に米芾がこの「蜀素」にしたためた長編の詩文がこの蜀素帖です。

若き頃の米芾が精力をかけて産み出した傑作と名高いこの蜀素帖では、流れるように自在に変化する筆の運びと勢い、リズムが気持ちよく、ありとあらあらゆる書法が鑑賞できます。時に早く、時にゆっくり、気持ちのおもむくままに、同じ字でも、異なる書き方が施されているなど変化に富んでおり、ちょっと一癖ある米芾の性格を序実に表したような書風となっています。





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