変り種新作月餅:キムチ月餅へのこだわりを聞く

 新作月餅のお知らせが、手元に届き始める8月の下旬。1通のプレスリリースに記されていた新作月餅が、旅々台北オフィスに静かな動揺をもたらしました。

白玉泡菜月餅」。直訳すると、“白菜キムチ月餅”。

 今までに“フカヒレ月餅”や、“チョコアイス月餅”などの変わり月餅はありましたが、月餅にキムチとはあまりにも大胆。しかもこれは「韓式月餅(韓国式月餅)セット」の1種類にすぎず、“カクテキ(大根キムチ)月餅”と、“高麗人参月餅”まであると言うではありませんか。

 台湾のネット上でもこの月餅は話題になりましたが、販売数は全国でわずか200セット。お値段も1箱1,800元という超レア月餅は、簡単に試食というわけにはいきません。そこで旅々台北.comは、発売元の福華大飯店に正式取材を申請。大胆といえば大胆すぎる、この月餅の開発責任者である、許世國氏に直接インタビューを試みたのでありました。

※中秋節、月餅についての詳しい情報は「熱門特集 華麗なる月餅」をご覧ください。


■・・・インタビュアー ・・・許世國氏

インタビュー会場となったのは、台北福華大飯店の江浙料理レストラン「江南春」。旅々台北スタッフがお邪魔すると、すでに窓際のテープルには、数々の月餅と小皿に盛り付けられた真っ赤な野菜。これはもしや・・

- これは中に入っているキムチですね!いい香りがします・・

そうでしょう。これも僕が自分で作ったんですよ。

- え・・(いただいた名刺をチェックしつつ)、許世國さんは製菓部門の責任者でいらっしゃいますよね?

はは。その通りです。しかし月餅はとても大切なお菓子ですからね。クオリティを保つためにも、月餅に必要な素材は全て自分たちで作ることが原則なんです。このキムチは、韓国のお客様にも誉めていただいて、テイクアウト用に販売して欲しいというリクエストもいただきました。

   

1,000個を超える試作を経て

-キムチまで手作りとはすばらしいですね。それでは、先ずは月餅の完成までのプロセスを教えていただけますでしょうか。

先ず月餅は台湾人にとって、とても重要なお菓子であることをご理解ください。中秋節という重要な節句に食べるお菓子であること、また贈答用品として高い品質が求められることから、製菓部門の力量が試される舞台でもあるのです。

また月餅の“話題性”にも気を配る必要がありますね。お客様は今年はどんな月餅が発売されるんだろうと、ワクワクしていらっしゃいますから、こちらも企画開発にはかなり気合をいれています。

プロセスですが、5月ごろから企画を考え試作をはじめます。6月のピーク時には1日50個以上の試作品を作っては食べ、また作り直しての繰り返しです。試作数は、全種類合わせると軽く1,000個を超えると思いますよ。そして候補作が完成したら、7月の幹部会議で最終作が決定します。この時は全国の福華飯店の総経理(社長)が集まって試食しますので、とても緊張しますね。

   

パンチをこめたキムチ月餅

-なるほど。1個の月餅の裏に、たいへんな努力が隠されているんですね。今年の“キムチ月餅”を開発するに至った理由はなんでしょうか?

今までツバメの巣や、XO醤といった、高級素材を使った月餅を作ってきましたが、確かにおいしいものの何か一味足りない、パンチ力に欠けると思っていました。今年の月餅はどうしようと悩んでいた時に、韓国人スタッフからキムチが提案され、その瞬間に「それだ!」と思いました。そしてインスピレーションが次々と沸いてきたのです。

しかし試作してみたものの、苦労の連続でした。キムチは水分が多いので、すぐに皮がしなってしまいますし、辛さばかりがとんがってしまう。高麗人参も熱を通すと水分が染み出てしまい、これでは長期間の保存ができません。最終レシピが完成するまでには、何度もあきらめそうになりましたよ。

フルーツに真珠が隠し味

-“キムチ月餅”というネーミングだけで、充分なパンチ力がありますが、異質なものの組合せだけあり、苦労は並大抵ではなかったのですね・・

と、ここで、試食タイム。白菜キムチが入った「韓式月餅」、カクテキ(大根キムチ)入りの「泡菜月餅」、高麗人参入りの「高麗人蔘月餅」をいただきます。

-お・・おいしいです。キムチの辛さはまろやかで、皮の甘みと調和していますね。高麗人参も嫌味のない苦味で、身体に良いものをいただいているという実感が・・

そう言ってもらえると、うれしいですね。皮にはね、パイナップルとオレンジ、レモンと梅のピューレを混ぜ込んでいるんですよ。忘れてはいけないのが、美肌効果がある真珠の粉。1斤(600g)、2万5,000元もする最高品質の真珠粉も、皮に練りこんでいるんです。月餅はカロリーが高いと女性には敬遠されることがあるのですが、僕の月餅は美容効果ばっちりですよ。

-それは素敵ですね。小ぶりで軽い食感なので、2、3個ぺろりといけそうです。

そうでしょう。ちなみに餡は42g、皮は12gがキムチ月餅の黄金比率で、これ以下でも以上でもいけません。この微妙な比率を守るためにも、福華大飯店の月餅は全て手作りなんですよ。ちなみに毎年、5万個以上の月餅を製作、発売しています。

-5万個を手作りですか・・・。ところで、この餡ですが、キムチのほかには何が入っているんでしょう?ねっとりした食感はアズキ餡のようですが?

えーと・・ごめんね、ここから先は企業秘密。すまないね!


「許世國氏 プロフィール」
台北福華大飯店 點心房 主厨
 キャリア33年の大ベテラン。
 月餅からキムチまで何でもござれですが、実は得意分野はケーキなどの西洋菓子。
 VIPのファンも多く、馬台北市長の奥様は、許世國氏のアップルケーキの大ファンだとか。長年の功績が評価され、台北の名誉市民の栄誉にも輝いていらっしゃいます。現在はクリスマスケーキの開発で、頭がいっぱいだそう。

最後に

肝心の“美味の秘密”はさらりとかわされてしまいましたが、月餅開発にかける情熱と、思い入れをたっぷりうかがうことができました。当初、“キムチ月餅”と聞いた時には全く味の想像がつかず、試食時にも一瞬のためらいを感じたのですが、皮の甘みとキムチのまろやかな辛さがマッチングして、「うまい!」と声が出てしまいました。

キムチと月餅という異質の組合せから、全く新しいおいしさに練り上げた力量には、さすがと申し上げるほかありません。

毎年、数多くの“変わり月餅”が発売される台湾ですが、それぞれの月餅の裏にドラマあり。ネーミングだけで判断せず、いろんな味にトライしてみようと決意をさせてくれた、大切な経験となりました。許世國さん、お忙しいところありがとうございました!

※キムチ月餅、高麗人参月餅など、12個の韓国式月餅がセットになった「牡丹宮廷禮盒 (1,800元)」は、全国の福華大飯店グループで予約受付中です。200セット限定ですので、ご予約はお早めに!


開発を担当した「江南春」點心チーフ 何建彬氏↑
福華大飯店では、蘇州式月餅セットの「牡丹金縷禮盒」も発売しています。蘇州式はパイのようなサクサクした皮が特徴で、軽い食感を産み出すのがとても難しいそうですよ。餡はマンゴー、クランベリーなどのフルーツ系と、小豆餡が中心。お子様から年配の方まで愛される親しみやすい味わいです。