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高雄空港を出発したバスは一路、南へ向かいます。高速道路の左右には水田が広がり、あぜ道の椰子の木が、ざわざわと風に揺れているのがいかにも南国。台湾の田舎ではお馴染みの風景で、正直、これから全く文化の異なる、いわば外国とも言える原住民村へ行くとは実感がわきません。それでも出発して二時間も経つと、だんだんと周囲の緑が濃くなり、車はゆるやかな坂道を登り始めました。

そして三地門という町に到着。「原住民名物」の看板を掲げたレストランやカフェ、お土産屋が建ち並んでいます。え?ここが隠れ里????とあせっていると、バスはそのまま町を通過。そして道路を封鎖したゲート前に、ききっ!と勢いよく停車しました。

高雄空港で合流した漢来大飯店の担当者に確認すると、さきほどの三地門はルカイ族と、パイワン族が住む町で、一般の観光客はそこまでしか入れないのだとか。私たちが目指す霧台は、このゲートからさらに一時間の奥地にあり、政府が発行した入山許可書を持っていない人たちは先に進めないのです。確かにゲート脇には警察のオフィスがあり、運転手さんが入山手続きをしています。

警察署の周囲には紅白のポインセチアが色を添えていますが、これはクリスマスの飾り付けではなく自生しているのだとか。普段は街中の植木鉢でしか見ることがないポインセチアが、思い思いに葉を広げて茂っている様子はなかなか新鮮な光景です。
車に戻った運転手さんは、これから先はカーブが多く、坂道も急なので車酔いする人はご注意ですよ〜とアドバイス。同行の新聞社や雑誌社のカメラマン達も、機材をあわてて身の回りにしっかり固定。私もシートベルトをしめなおし、いざ、隠れ里へ出発!
ゲートを抜けたバスは一路、山の中へ。切り立った崖にへばりつくように作られた道は、予告どおりカーブが多く、ハンドルが切られるたびに、乗客は右へ行ったり、左へ行ったり。車がやっとすれ違える程度の道幅で、正面から材木を山積みにしたトラックが来た時などは、運転手さんからうめき声が。道の脇から伸ばされた木の枝が、ぱしぱしと窓ガラスをたたく音が響きます。

はるか眼下の谷底には北隘寮渓谷が滔々と流れ、見上げると2000メートル級の切り立った山々が彼方まで重なり、そびえ立っています。台北で見るような丸みを帯びたやさしげな山ではなく、来るものを拒むようなその険しさに、自分が別世界に入り込んでしまったことを実感。深い谷をぐるりと回った先に見える道は、緑の山にすっ、とひかれた、一本の線でしかありません。車窓から写真を撮ろうと思っても、とても景色がファインダーに収まりきらない大きさで、さっさと断念。当初はシャッター音やおしゃべりで騒がしかった車内も、気がつくと静まり返っています。
そして車の揺れに頭がぼーっとしてきた頃に、バスは橋を渡り、渓谷脇に開けた広場に停車しました。道路標識には「伊拉」という地名が読めます。広場の脇にはルカイ族の英雄が彫刻された門が建ち、その前で、頭に花の冠を乗せ、色鮮やかな刺繍がほどこされた服を着た女性が、にこにこと私たちを出迎えてくれました。伊拉迎賓門、ルカイ族の村の入り口へ到着です。


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