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台北日和 2006年5月30日
日記を描き続ける人 画家 呉敏興

※台北日和の記事は遡及調査をしていないので、現状と異なることがあります。

 白を基調としたナチュラルな外観の建物。通り沿いの大きなウィンドウから見える室内には、お客様らしき人も見えます。ここはカフェ?雑貨屋さん?と思いつつ足を踏み入れたそこは、台湾の画家、呉敏興のアトリエ「路邊花」でした。

 アトリエ「路邊花」は、台北のおしゃれスポット、忠孝東路界隈の静かな裏路地にあります。カフェやレストランと間違えて入ってくる人も少くないそうですが、看板らしきものはなく、それも納得。「路邊花」はどんな人でも大歓迎のオープンなアトリエです。

 こちらで毎日絵を描いているという油絵画家、呉敏興さんは、1952年台湾北部の新竹で生まれました。幼い頃より絵が好きで、描いてはクラスメートに見せていたそうです。美術系の大学を志望していたものの、医師であるお父さんのすすめでやむなく薬学部に進むことになったそうですが、絵画への情熱は心のどこかに残っていたようです。
 10年ほど前、自由な発想と作風で知られる台湾の画家、劉其偉の作品を偶然見かけたことにより、呉敏興さんは再び絵を描き始めることになり、そして自身の命と等しいほどかけがえのないものになったそうです。一時は経済的な苦しさからうつ病になったこともありましたが、奥様や友人たちに支えられ立ち直ったとか。この時期に描かれた絵には、くすんだグリーンやグレーばかりで、鮮やかな色が全く使われていません。また、呉さんは幼い頃の事故で右目の視力を失い、現在左目の視力もあまりよくないそうで、描いている絵は全て呉さんのイメージの中の風景だそうです。 呉さん曰く「私は日記を描いているのです。たいていの人は書くことで自分の日常を記録しますが、私は描くことで日常を表現しているのです。」

 牧師の家系に生まれ貧しい人のために活動し作品を描き続けた画家、ゴッホの生き方に共感を覚えるという呉さんは、敬虔なキリスト教徒。絵を描く前には必ずアトリエにおかれている十字架の前で祈りを奉げ、神からのインスピレーションを得るそうです。そして一度描き始めると寝食も忘れ、数日で描ききってしまいます。奥様や親しい友人が話しをしても反応はなく、ただひたすら描き続けているそうです。取材でお話した際には、温和で冗談好きな人という印象が強かったので、正直このお話を伺ってそのギャップに驚きました。

 「絵を描くことは私の最高の趣味で、同時に命でもあるのです。絵が売れても売れなくても私は描き続けます。何が起ころうとも、私は自分の生命が尽きるまで描き続けるでしょう。」と穏やかな笑顔で語ってくれました。

※ 呉敏興さんの絵画は1号5000元から販売しています(非売品有り)。

【呉敏興アトリエ「路邊花」】
住所:台北市敦化南路1段273巷38号1F
電話:02-2773-2733
交通:MRT忠孝復興駅から徒歩約10分

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