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2005年5月5日
■朝酒が許される街
まだ朝の10時だというのに、目の前には茶碗にあふれんばかりにそそがれた紹興酒。つまみは、お好きな方には匂いがたまらない臭豆腐。朝酒が堂々と許される街、それが紹興です。
中国酒といえば紹興酒。中国酒について語るには、中国酒の代名詞ともなっている、このお酒の故郷に先ず詣でるのが礼儀ではないかと、行ってきました中国まで。紹興市があるのは、上海から列車にゆられて約3時間の内陸部。酒造りには清らか、かつ豊富な水が必須なのですが、紹興もその例にもれず市内には縦横無尽に水路が走り、独特の足こぎ舟が岸につながれています。
近くにある鑑湖は、名水の産地として昔から有名。この水に含まれている独特のミネラル分でおいしいお酒ができるそうですよ。
■筋金入りの酒の都
約2400年前の春秋時代(紀元前770〜403年)には、名酒の産地として知られていたという紹興。街中に酒蔵がずらりと並び、お酒の香りが漂っているのだろうと期待していたところ、街には酒の存在を感じさせる雰囲気はほとんどありません。最近では国営企業の大きな工場での一括生産がほとんどで、お酒の香りがもれてくることなんてないらしいのです。
紹興酒の歴史や醸造方法を説明した民間企業のショールームにも寄ってみましたが、試飲サービスはなく、酒蔵を巡って飲み比べをしようという目論見がぐらりとかしぎます。
■文豪も愛した紹興酒
しかし、酒好きの嗅覚をあなどってはいけません。どうもこちらから匂ってくる・・と向かった先は、中国を代表する作家、魯迅(1881〜1936年)の生家である魯迅故居。彼が生まれ育った家、学んだ私塾などが当時のまま保存され、周辺一帯が昔ながらの街並みを残した歴史保存区として開放されているのです。
魯迅も常連だった居酒屋「咸亨酒店」は、朝の10時をすぎたばかりだというのに、名物のソラ豆やモツをツマミに紹興酒をあおる人でいっぱい。自家製の紹興酒を売る店からはさかんに呼び込みの声がかかり、どうやらここは朝酒が許される場所のよう。さすが、酒の都はこうじゃなくてはいけません。
■梅にうぐいす 紹興酒には臭豆腐
世間様が一生懸命働いている時間帯に、酒なんぞ飲んでいいのだろうか、紹興だからいいのでしょう、とさっさと自己完結し、どの店にしようかと歩いていると、鼻をくすぐるのは懐かしい香り。そう、台湾が誇る小吃、臭豆腐の香りです。
臭豆腐ももともとこの地域が発祥だということで、クサうまマイスターにするか、酒マイスターにするか迷ったほどのクサモノ好きの筆者は迷わず臭豆腐屋に入店。メニューに紹興酒があるのは、もちろん確認済みです。
こちら「三味臭豆腐」は臭豆腐名人の関係店らしく、紹興へ来たらここには寄ってみないとな、なんて中国人観光客も話しています。古びた木のテーブルに置かれたのは、おおぶりの茶碗になみなみと注がれた紹興酒と、紙箱に入った臭豆腐。
紹興酒は濃い琥珀色で、カラメルのようなちょっと焦げたような香りが鼻をくすぐります。台湾産に比べてかなり甘みが強く、とろりとした喉越しの本場紹興酒は、台湾産のサラリとした味に慣れた身には、ツマミ無しに飲みきるには厳しい気がします。
そこで登場するのが臭豆腐。衣に塩がふりかけてあるのか、これがとにかくしょっぱいのです。しかし、紹興酒の甘みと臭豆腐の塩からさ、どちらも主張が強く単独ではかなりキツイ味わいなのが、口の中で出会うとカドがとれ、まろやかな味わいに変わっていきます。
臭豆腐の表面はカラリと揚がり、箸で割ると、ぷるぷるの真っ白。台湾の厚揚げしっとり系に対し、紹興の臭豆腐は、カリカリ&ぷるぷるの揚げだし豆腐系。口の中で豆腐を崩すと、大豆の味がしっかりと伝わってきます。
日本では冷酒に冷奴、紹興では紹興酒に臭豆腐なのでしょう。植物性たんぱく質が豊富な豆腐は、二日酔い防止にピッタリなんですよね。
■紹興から台湾 途中で何が・・・
しかし同じ紹興酒(そして臭豆腐)とは言え、ここ紹興と、台湾で製造されている紹興酒は、別物と言っていいほど味わいが違います。台湾で紹興酒が造られるようになった背景には、戦後、大陸から移民してきた人々が、故郷の味を懐かしんだことがあると言われています。
それならばなぜ、紹興の味をそのまま再現しなかったのか。どうして現在、台湾で一般的に飲まれている、さっぱり系の味に変わっていったのか。
それを知るには、台湾の人々の嗜好や文化、歴史、ひいては気候や農作物に関することまで考察する必要があるかもしれません。
連載一回目にして、なにやら大きすぎる問題にぶち当たってしまった・・・と、朝酒でふらつく頭で考える筆者の目には、真昼の太陽はあまりにもまぶしすぎるのでありました。
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