第4回 
 ハッハッハッハッ・・・、うわ、なんだカユイよー。こそばゆさに耐えられなくて思わず目を開けると、うれしそうな子犬の顔。ねぇ、起きてよ、遊ぼうよとばかりに、僕の足をペロペロなめています。今日は星に抱かれて眠ろう・・・なんてカッコつけた僕ですが、ぐっすり眠れたのは朝方近くなってから。腕時計を見るとまだ朝の5時。都会人の僕にとって、まだ真夜中にも等しい時間です。これは二度寝決定!

◆ 夢のような朝焼け

 だけど真っ黒な子犬はあきらめてくれません。足をなめなめ攻撃に負けてしぶしぶ起きると、目の前には今まで見たことも無いような神秘的な光景が広がっていました。まだ朝早いこの時間、空には漆黒の闇が広がっているというのに、水平線には、その闇のカーテンを押し上げようとオレンジかかった紅色の光がじわりともりあがっています。海にはヤミ族の色鮮やかな丸木舟が漂い、雲間から差し込む朝の光に輝く様子は一枚の宗教画のよう。海岸に静かにたたずむ白亜の教会が、さらにその印象を強めます。じっと見とれているうちに、空は漆黒から藍、赤、オレンジとその表情を変えていきます。お前は僕にこの景色を見せたかったのかい?と、子犬を抱きしめると、彼もうれしそうに僕の周りをぐるぐる走ります。ほんとうに、ありがとう!

 しばらく海を眺めていると、肌が浅黒い女性が僕に何か話しかけてきました。だけど何を言われたのか理解できません。もしかして寝不足で頭がぼーっとしているのかなぁ・・と思っていると、彼女はうなずいただけで小学生ぐらいの子供や、おじいさんたちとおしゃべりをはじめました。そのおじいさんが履いている色鮮やかなズボンを見て、気づきました。あぁ、みんなヤミ族のひとたちだったんだ。これはお邪魔かなと、立ち上がった僕の手をふと引いて、男の子が北京語で「お兄ちゃん、どこから来たの?」とたずねた瞬間、なぜか涙が出そうになりました。はじめて訪れた島の、朝焼けの中で1人で目覚めた僕。目が覚めてはじめて聞いた言葉がまるっきり理解できなかった僕は、どこか遠くの国で一人旅をする、さびしい異邦人モードにはいっていたようです。

 ヤミ族の人たちは自分たちの言葉を守り続けているようですが、学校教育やTVの影響で、話すことが出来る人はしだいに少なくなっているそう。僕に話しかけてくれた小学生の男の子は、北京語もヤミ族の言葉も両方話せると言っていましたが・・・。

◆ バイクでGo!


  野銀の民宿を後にした僕は、バイクに乗って昨日も行った気象観測所へ向かうことにしました。この島を離れる前に、もう一度、360度パノラマの雄大な景色にゆったりとひたりたかったからです。昨日とは違う山道を登っていると、道の脇に子供たちのグループが騒いでいるのに出くわしました。あれ、このあたりは人の家もまったくないし、どうして子供が・・・?と近寄ってみると、一番大きな子でも10歳ちょっと、小さな子は5歳ぐらいの男の子の4人組です。こんなところで何をしてるの?という問いに、あのね!あっちのね村に行くんだよ!友達と遊ぶんだよ!と、うれしそうに飛び跳ねる子供たち。キラキラした目に、民宿にいた子犬を思い出します。

 でも、この道の先の村って、え、すごく遠いはずじゃ・・とうろたえる僕に、そんなことないよー。歩いて2時間ぐらいだもん!と男の子たちは誇らしげ。往復4時間のこの道のりを、この子たちは毎日歩いているそうで、その体力には感動、感動。しかし、よし!じゃぁ今日はお兄ちゃんがバイクに乗せてやるよ!と思わず言ってしまったのは・・まずかったかも。小さな子供といえども相手は4人。125CCのバイクに5人はぎっちぎち。僕を挟んで前に1人、後ろに2人が座り、残った一番小さな子は、シートとハンドルの間にちょこんと立ってもらいます。

 スピードを出さないように、そろそろ運転しても、下り坂はやっぱり怖い。ジェットコースターみたいだぁ〜〜!と子供たちは大喜びですが、僕は事故を起こさないように・・・・新聞には載りたくないよう・・と、冷や汗たらたら。30分ほど後に無事に目的の村にたどり着いた頃は、もう疲れが限界。美しい景色なんてぜんぜん見られず、蘭嶼島を離れるフェリーに乗るのがせいいっぱいだったのでした。

[バックナンバー]
第3回 蘭嶼島 Part1


つづく